財団の沿革と寄附、賛助会員

仁科芳雄博士の没後,「博士の偉大な業績を称えるとともに原子物理学の分野において新鋭科学者を育成せんとした博士の遺志を継ぐ」博士に因んだ学術事業を興すべしという機運が,博士と親交の深かった国内外の学者や政財界人に高まりました。それを受けて当時の 吉田茂首相 を会長として「設立発起人会」が結成され、1955年12月5日に財団法人仁科記念財団(クリックで「寄附行為」をご覧いただけます)が設立されました。初代理事長は渋沢栄一翁の孫の渋沢敬三氏,常務理事は朝永振一郎博士です。設立に当たっては,わが国の財界からの寄附2,165万円,国内の個人の寄附234万円,海外の学者からの寄附約100万円,計約2,500万円をその基金としました。渋沢理事長は財団の基礎の確立に尽力されるとともに財政基盤の増強のため1960年に第2次募金を行い,続いて第2代朝永理事長が1969年から1976年にわたって第3次募金,第3代久保亮五理事長が1980年から第4次募金を行い,これらの募金によって「基本財産」は現在の約5億8,600万円に達しました。詳しい経緯は「仁科記念財団50年の歩み」(2005年刊行) にあります。

第4代西島和彦理事長の代の2001年に元仁科研究室研究員故中山弘美博士のご遺族からの約3,300万円のご寄附第6代小林誠理事長の代の2013年には元仁科研究室研究員で当財団常務理事を務められた故玉木英彦博士からの遺贈寄附金約6,600万円を頂戴しました。そして2020年1月には,女性初の仁科記念賞受賞者であります故伊藤早苗博士 (元九州大学応用力学研究所教授、理事・副学長) からの遺贈寄附金5000万円を頂戴しました。これらの遺贈寄附金は「特定資産」に繰り入れ定款に謳う当財団公益目的事業の執行に限定した準備資金となっております。また,(公社) 日本アイソトープ協会からご寄附100万円,(公財) 科学振興仁科財団(岡山県里庄町)からはご寄附10万円 を毎年頂いております。

第3代久保亮五理事長の代の1991年に,財政基盤を一層固めるため「賛助会員制度」(会費:20万円/1口/法人) が制定され,第5代山崎敏光理事長の代には賛助会員数は18社に達しました。現在は,科研製薬(株),鹿島建設(株),キッコーマン(株),住友化学(株)の4社さまと個人会員1名さまからご支援をいただいております。

仁科記念財団は,基本財産と特定資産の運用益に加えてご寄附と賛助会費に依拠して,「仁科記念賞」「仁科記念講演会」他の仁科博士のご遺志を継ぐ事業を毎年行っております。今後とも,これらの事業を発展させるべく鋭意努力してまいりますので、ご寄附、賛助会員へのご加入でより一層ご支援を賜りますようお願いいたします。

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仁科記念財団歴代理事長

渋沢 敬三(仁科記念財団初代理事長:1955 – 1963)

渋沢栄一の孫。東京帝国大学経済学部卒。財界関係では日本銀行総裁,大蔵大臣,国際電信電話社長,文化放送会長などを歴任。生物学や民族学の研究者でもあり,日本民俗学協会会長,人類学会会長などを務めた。(1896 – 1963)

朝永 振一郎(仁科記念財団第2代理事長:1963 – 1979)

1929年京都帝国大学理学部物理学科卒,1932年理化学研究所仁科研究室に入所。日本の理論物理学振興の祖である。1952年文化勲章受章。1956年東京教育大学学長。1965年にシュウィンガー,ファインマンと量子電気力学分野の基礎的研究でノーベル物理学賞を共同受賞。(1906 – 1979)

久保 亮五(仁科記念財団第3代理事長:1979 – 1995)

東京帝国大学理学部物理学科卒。専門は統計物理学,物性科学。1953年に「久保―冨田理論」と呼ばれる,磁気共鳴現象の量子統計力学の定式化を行い,1957年にこれを一般化して「久保公式」といわれる線形応答理論を体系化した。1957年,「非可逆過程の統計力学」で仁科記念賞(第3回)を受賞。東京大学名誉教授。1973年文化勲章受章。(1920 – 1995)

西島 和彦(仁科記念財団第4代理事長:1995―2005)

東京大学理学部物理学科卒。専門は素粒子論学。1953年,27歳のときに「西島―ゲルマンの規則」により素粒子の新しい規則性を発見。1956年,「素粒子の相互変換に関する研究」で仁科記念賞(第1回) を受賞。東京大学および京都大学名誉教授。2003年文化勲章受章。(1926 – 2009)

山崎 敏光(仁科記念財団第5代理事長:2005 – 2011)

東京大学理学部物理学科卒。専門は原子核素粒子物理学。1970年,理化学研究所サイクロトロンを用い,重い原子核の高スピン磁気モーメントの測定から,陽子の軌道磁気モーメントの異常増大を見出す。1975年,「核磁気能率に於ける中間子効果の発見」で仁科記念賞(第21回)。東京大学原子核研究所長,同名誉教授。2009年文化功労者。(1934 – )

小林 誠(仁科記念財団第6代理事長:2011 – 2023)

1967年名古屋大学理学部物理学科卒,専門は素粒子理論。1973年,益川敏英と共に CP 対称性の破れに関する小林·益川理論を提唱した。1979年,益川と共に「基本粒子の模型に関する研究」で仁科記念賞(第24回)を受賞。2008年,「クォークが自然界に少なくとも3世代以上ある事を予言する,CP 対称性の破れの起源の発見」で益川と共にノーベル物理学賞を受賞。2008年文化勲章受章。高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授。(1944―)